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| ●ΔΣ変調と量子化 〜1bitで回路を簡単化〜 |
| ΔΣ変調は、ある信号(アナログ信号とか、多ビットで表現された信号など)を1ビットに変換する手法の一つです。 現在では、オーディオやA/Dコンバータに応用されています。 ΔΣ変調の基本的な構成は図1.1のようになっています (これは、最も簡単な一次のΔΣ変調と呼ばれるものです)。このΔΣ変調器は、量子化器、積分器から構成されています。 ΔΣ変調というと、図1.1の量子化器が1bitになっていて、"ΔΣ変調=1bit"というイメージを抱いている人が多いと思います。(別に、ΔΣ変調器の量子化器は1bitである必要はありません。)1bitの量子化器を使うのメリットは、"単一のしきい値"のみで簡単に実現できるという点です。 これが、もし16bitなどの多ビットに変換する場合は、216-1個のしきい値が必要で、さらに、それらが正確に等分されてなければなりません。A/Dコンバータの場合、これが正確でない場合には変換誤差が生じ、せっかく16bitで表現したのにもかかわらず、それ相当の精度が得られません。 1bitで信号を表現するメリットとして、信号処理の回路も簡単することができるという点が挙げられます。もし、これが多ビットで表現されているならば、その演算処理には多くの回路を必要としてしまいます。 しかし、1bitでは、正確に信号を表現するのには足りないんじゃないの?という疑問が生じてきます。たしかに、1bitでは、少なすぎる気がします。 ΔΣ変調は、"ノイズシェーピング"と"オーバーサンプリング"でこの問題を解決します。次では、それについて説明します。 |
![]() 図1.1 1次のΔΣ変調の構成 |
| ●オーバーサンプリング |
| 元の信号をディジタルに量子化する場合、かならず"量子化誤差"が発生し、これが精度を左右します。 量子化誤差は、 量子化誤差=量子化後の信号-元の信号 で表されます。アナログ信号をディジタル信号に変換する限り、必ず発生してしまうものです。 たとえば、-1〜+1までの間に分布する信号を16bitで量子化する場合、その誤差の最大値は1/216となります。これを単純に1bitで量子化すると、1/2となり、とてもじゃないですが、そのままでは量子化誤差が大きくなりすぎて使い物になりません。 ΔΣ変調の場合、オーバーサンプリングという手法を使って、この量子化誤差の問題を解決しています。オーバーサンプリングとは、信号帯域よりも十分に高い周波数でサンプリングを行うことです(図1.3)。 たとえば、音の例を取り上げて説明しましょう。人間の耳で聞き取ることのできる周波数帯域は、一般的に20〜20kHzまでといわれています。サンプリング定理によると、20kHzまでの信号を表現したい場合には、その2倍の周波数、すなわち40kHzでサンプリングすればよいことになります。(なので、CDのサンプリング周波数は44.1kHzとなっています。) オーバーサンプリングとは、これより高い周波数でサンプリングを行います。そのサンプリングの倍率のことを、オーバーサンプリング係数といいます。たとえば、音の場合、オーバーサンプリング係数が64倍ならば、サンプリング周波数は2822.4kHzとなります。 ΔΣ変調は、オーバーサンプリングをすることによって精度の問題を解決しているといいました。直感的には、出力を1ビットに制約する代わりに、時間方向に情報を展開して、信号を表現しているイメージです。 では、なぜオーバーサンプリングで、精度がよくなるのでしょうか? 図1.3の赤い分布は、通常のサンプリングとオーバーサンプリングをしたときのノイズ特性を表しています。 ノイズ成分の電力の総和は、通常のサンプリングもオーバーサンプリングした場合も同じです。しかし、信号帯域(fs/2)の部分のみに着目すると、オーバーサンプリングをしたほうが小さくなっているのが分かります。 では、もうひとつの重要な性質であるノイズシェーピングについて説明します。 |
図1.2 オーバーサンプリング
図1.3 オーバーサンプリングと量子化ノイズ |
| ●ノイズシェーピング |
| ΔΣ変調は、オーバーサンプリング他にノイズシェーピングの特性が挙げられます。 一般的な量子化器を使って量子化を行うと、全周波数に均等に量子化ノイズが分布します(図1.4上)。一方、ΔΣ変調の場合は、原信号付近のノイズが押さえられ、その代わりに高い周波数に量子化ノイズが形成されます(図1.4下)。 すなわち、不要なノイズ成分は、オーバーサンプリングした高い周波数領域に押しやってしまうことで、原信号の精度を改善しています。 |
![]() 図1.4 ノイズシェーピング |
| ●ノイズシェーピングの原理 |
| ここからは、すこし難しくなります。 (とりあえず、ΔΣ変調の動作が見てみたい場合は、次に進んでください。) ΔΣ変調のノイズシェーピングは、どのような原理になっているのでしょうか? ΔΣ変調器は、量子化器に加えて、積分器やフィードバックのループを有しています。 これに含まれている量子化器は非線形ですが、解析を容易にするため、外から nq というノイズを加えたモデルで考えます。こうすると、線形のモデルでノイズの特性を考えることができます。 まず、入力 x から出力 y までをみてみると、次式のようになります。 y = x すなわち、入力の信号はそのまま出力に現れることになります。 つぎに、量子化ノイズnqから出力 y までをみてみると、次式のようになります。 y = ( 1 - z-1 ) nq 実際の1ビット出力 y からは、これらを重ねあわせた信号が出力されますので、次式のようになります。 y = x + ( 1 - z-1 ) nq nqの周波数特性は、図1.4の上の形になります。ΔΣ変調の場合、この特性に( 1 - z-1 )というフィルタを通したものが出力に現れることになります。 では、( 1 - z-1 )はどんなフィルタなんでしょうか? これを周波数領域で考えるためには、z-1を exp(- jω / fs)とおいてやると特性が分かりやすくなります(ただし、fsはオーバーサンプリング後のサンプリング周波数)。 1- z-1 ←→ 1-exp(-jω / fs) 1-exp(-jω/ fs)={exp(+jω / 2fs)-exp(-jω / 2fs)}exp(-jω/2 fs) 振幅だけに着目すると、2sin (ω/ 2fs) となっているのが分かります。 ω=0 (直流) で
2sin (ω/ 2fs)=0
となり、低周波数領域でノイズが押さえられ、高周波数領域にノイズが押し出されるという特性を得ることができます。 すなわち、ノイズシェーピングは、量子化器の前の積分器とフィードバックの構造により生み出される特性なのです。 |
![]() 図1.5 ΔΣ変調器の量子化器のモデル化
図1.6 ノイズの特性 |
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